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レモンスカッシュ

第4章 M/A

A side



普段はきちんと守る信号も、今日ばかりはごめんなさいと心の中で謝って、無視して突っ切ってる。


「やっばいよー…。」


自転車で坂を下って、バイト先へと急ぐ。

風を切るのを感じる余裕なんて、微塵もない。


今の地点で、もう遅刻は確定だけど、急ぐ他なかった。

深く考えると体が重くなるのは分かってるから、とにかく急ぐことだけを考えた。





「すいません!」
「何やってんだよ!どんだけ遅れてんだ!この時間は忙しいってのに!」
「本当にすいません!」


遅刻した俺に待っていたのは、ひどいお叱りの声。



まぁこんなに遅刻してるんだし、当たり前のこと。

想定内だよ、想定内。



だけど…。
どうしても心に余裕がない。


気を抜いたら涙が出そうで、ただただ頭を下げて、平謝りをした。



「これだから嫌だったんだよ、俺は。高校生のバイトを雇うなんて…。」


頭の上から、ため息混じりの声が聞こえてくる。



俺だって、好きでバイトをしてる訳じゃない。


バイトがなければ、高校生らしく部活して、友達と遊んてま…。漫画みたいな青春が出来てたんだ。

補習授業なんてせずに、夏休みを謳歌できたんだ。


「おい、聞いてんのか!」
「はい、すいません。
以後気をつけます!」


俺だって…。


夜遅くまでこき使われて働いて、クタクタになって1人の家に帰る。

化学の課題なんて、頭の片隅にもなかった。

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