レモンスカッシュ
第4章 M/A
Mside
「わりぃわりい、ちょっと遅くなった」
俺が勤める高校は、某有名大学の敷地内にある付属校で。
同い年の旬は、そこの大学の研究室に勤めている。
「ん、じゃあ行きますか?」
俺らは、久々に飲みに繰り出した。
「今日どこ行く?」
「まぁ花金だしなー。
ちょっと高めの所、行っちゃう?」
「あのなー、花金って俺明日から補習なんだけど?」
「へぇ、今年は該当者いたんだ。」
「うん…2年のヤツ、1人。」
俺も旬も、この高校と大学の卒業生で。
高校から大学への、推薦基準の厳しさを知っている。
だからこそ、夏休み補習に引っかかって大学に行けるのか…?と心配になるのだ。
「あ、生田から電話だわ」
たしかに…相葉。
大学…大丈夫なんだろうか?
ウチの二宮はやろうと思えばどこまでも出来るようなヤツだから、特に心配はしていない。
だが…アイツ…
…ああ、ダメだ。明日、櫻井先生に話を聞こう。
「潤?生田は後から来るって。で、お薦めの店リスト貰ったからそっから探そうぜ。」
「お、いいよ」
旬が見繕った日本料理屋に向かう。
「なんだよアイツ普段、こんな店来てんのかよ」
「まぁ芸能人だしな」
生田、とはこれまた同級生で今は俳優をやっているイケメンだ。
門から数10メートル先の引き戸を開けると、綺麗な仲居さんが待っていた。
「生田様のお連れ様でございますね?ご案内致します。」
日本庭園に挟まれた渡り廊下を歩く。
個室のある離れに入る直前…
「え…」
少し離れた場所にある厨房の外で、
いかにも偉そうな人から怒鳴られ、必死に頭を下げている青年が1人。
「潤…?」
前を歩いていた旬が振り返った。
「あ、ごめんごめん。」
何も無かったふりをして、追いかけて。
生田が先に着いていた個室に入っても。
上等なお酒や料理が運ばれてきても。
脳裏に焼き付いて離れないのは、
…あの青年。