レモンスカッシュ
第4章 M/A
M side
勢いよく頭を下げる相葉。
なんか…慣れてるよな…
いっつも、ああやって。
店のお偉いさんに怒られて、頭下げて…
下げる時に見えた顔は、
…何かに耐えるような。必死な顔…
俺が高校生の時は、
そんなこと抱えていなかった。
小栗や生田と勉強して、部活して、遊んで…
バイトもしてたけど、ただの小遣い稼ぎで…
気づいたら、詰まっていた息を吐いていた。
「相葉…?俺別に怒ってねーよ?」
「…え…?」
唇を噛み締めながら、
…恐る恐るといった感じで、顔を上げる相葉。
ちょっと涙で潤んだ瞳…
なんかちょっと失礼だけど、
き、綺麗…
「別に俺、鬼じゃないからね?」
「あ、あの、でもっ…なんもっ…やってなくて…」
あたふたと慌てながら、なんか言葉を紡ごうとしたみたいだけど…
俺が手を上げて、
それが相葉の視界に入ったとき、
「ひゃっ」っていう短い声と
目をつぶって首をすくめた顔
それはたぶん、何かに怯えていて…
俺の手が相葉の頭をよしよしって撫でて
髪が少し、くしゃってなったとき、
相葉がまた、恐る恐る目を開けて…
俺と同じくらいの背なのに、
首を縮めてるから、ちょっと上目遣いになっていて。
「…相葉?」
「せんせ、い…」
相葉の掠れた声。
と同時に、
零れ落ちる、一滴の雫。
その時窓から、強い風が入ってきて。
俺が着ていた純白の白衣をバサッと揺らした。