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レモンスカッシュ

第4章 M/A

A side


眠るのは好きじゃないし、病院はもっと好きじゃない。


だけど動けないし、それ以前に目を開けることすら出来ないんだから、また深い闇へと墜ちていく。



暗い記憶に引っ張られて、もうダメだって思う時、そこでいつも声がする。


「相葉…。好きだ。」

「もうそろそろ起きろよな…。」

「遅刻の範囲を超えてるぞ、コイツは…。」


色んな、だけど同じ人の声が聞こえてきて、真っ白い光に包まれて俺は助かるんだ。


…松本先生の声。




今もそうだ。


また闇が見える。

母親も、父親もみんな俺を引きずり落とそうとしてる。

親族もみんなみんな…。



引きずり込まれそうになって、もうどうしようもないと思った。



手が伸びてきた。


真っ白い光の中から、綺麗な手が伸びてきた。

「こっちに来い」って声とともに。


その手をがむしゃらに掴んだ。ぎゅっと、固く。


その手に引き上げられてく。白い世界へと誘われてく。





「んん…。」


目を開けることが出来た。
久しぶりの眩しい光は、目を刺すような刺激だ。


真っ白い天井が見える。


手には暖かい感触。

その先を辿れば、ベッドサイドの椅子に座って、俺の手をぎゅっと握ってベッドに頭を乗せて寝てる人が見える。



…もうつむじだけで、誰だか分かるようになっちゃったんですよ、俺…。



ねぇ、先生。

自惚れてもいいですか。
言ってもいいですか。



「好き、です…。」

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