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レモンスカッシュ

第4章 M/A

M side


あの日から、俺は毎日病室に通っている。

朝、一度学校に寄る。
直ぐに病院に行く。

面会受付をして、ずーっと隣に居る。


…まだ目を覚まさない、相葉の隣に。


声をかけてみたり。
相葉用のプリントを作ってみたり。
そのプリントを読み聞かせてみたり…


巡回に来る看護師さんに、熱心ですねぇと笑われたりした。


相葉が病院に運ばれてから4日目のことだった。


午後、ぽかぽかと暖かい気温にうとうとしていた時だった。


俺の下で、何かがもぞもぞと動いている。


そして、耳に入ってきた、



…掠れた、小さな声。



「好き、です…」


俺が握っていた相葉の手が、ゆっくりと動いて、


右手の甲に、キスされた感覚…



「…相葉…」

俺が顔をあげると、


眼がぱっちりと開いた、



相葉と目が合った。



「…せんせ…」

「相葉、良かったぁ…」


思わず抱きつくと、




相葉がため息。



「先生、言いたいことが…」


「いや、俺に先に言わせろ…」



ふふっと笑う気配。


「じゃ、先生からどうぞ」


体をゆっくり離す。



「あの…お前、バイトキツいのに、夏の補習入れて悪かった」


「そんなこと…」


相葉が、ちょっと慌てたように俺を止める。


「でも、俺にとってはすごい良かったんだよ。」


ふぅっとひと息ついてから、


相葉の顔を両手で包んで。




「お前のこと…好きになれたから」




「先生っ…僕も、好きっです…っ」



泣き出してしまった相葉。



「泣くなって…」


「だってぇ…」



相葉が目を覚ましたこの日。


俺の誕生日の、前日だった。

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