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レモンスカッシュ

第4章 M/A

「大丈夫だから。


好きだ…。」



たった一言。
耳元でたった一言をくれた。



そこでやっと分かる。

「違うんだ」って。


また涙が止まらなくなった。


…ちゃんと話そう。先生に。
いつか全部。




そんな俺を見て、

「仕方がないなー…。」なんて言いながらも、ずっと優しく背中を摩ってくれていた。



ずっと求めていた。

安心出来る、温かい場所。


抱きしめてくれた腕の中からそっと抜け出して、先生の顔を胸の中から覗いた。



「ん…?」


やっぱりその瞳は暖かくて…。

声も、表情も、この場所も空間も暖かい。



「先生、好き…。」
「…うん。」
「補習、出来なくなっちゃってごめんなさい。」
「今はそんな事いいだろ?」
「でも…。」


先生は補習を楽しみにしてくれてた。

俺だってあの空間が好きだった。


補習が終われば、俺と先生は離れてしまう。
先生は3年生の先生だから、授業以外では会えないし…。


だからせめて、夏休みくらいは2人っきりで過ごしたかったんだ。

勉強でも何でもいい。

それが会える口実になるならって。



明日の午前中には退院出来るけど、でも…。



よほど俺がひどい顔をしてたらしい。


「ぷっ…。」
「あ、ひどいっ。」
「考えてることが分かりやすすぎるから…。


じゃあ、しよっか。」
「え?」
「特別補習。

明日、俺の家で。」

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