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黒猫ニーノと相葉さん。

第11章 悲しみの涙が乾いたら。

『んじゃ、俺、行くわ。』

『えっ!さっき来たばっかじゃん!』

『俺だって忙しいんだよ!じゃーな!』


『ちょっと!ジェイ!』


ジェイはベランダからタンッ、と飛び降りて
急ぐように櫻井さんの待つ家へと帰ってしまった。







相葉さんが見つめていた
人間の姿のぼくの写真を
まじまじと見つめた。


これ、ホントにぼくなのかな?


二人共はにかんで
幸せそうで。


ぼくって人間になると猫っぽくないんだね。
どっちかっていうと、子犬。柴犬の子犬。
犬っぽい猫なんて
なんか変なの。





胸のあたりがザワザワする。

この姿で
ぼくは相葉さんとの1ヶ月を
どんなふうに過ごしたんだろう。


思い出そうとしても
うまく思い出せない。

交わした言葉さえも
思い出せない。




ごめんね、相葉さん。

謝るのはぼくの方だ。







それから数日経っても
相葉さんは仕事から帰ってから
夕飯を作るためにキッチンに立つことはなかった。


そして毎夜のように
相葉さんのあの艶っぽい声が
ベッドから聞こえた。

最後には決まって
ぼくの名前を呼ぶんだ。


『ニーノ…』
って
とても
とても切ない声で。



ただ一つ違うのは
相葉さんが泣かなくなったこと。

相葉さんはもう
人間のぼくを忘れようとしているのかな。

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