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嫌われ狸の一生

第11章 妹 ~愛~

だからきっちり話をしに来たと、若い衆にどいてろって態度でボクは玄関に向かった。
小学生にしてこの眼力は過酷な経験をしてきたからこそ出せたんだろうな。ちょっと自慢。

父親は熊のような大男だった。
ボクはやり過ぎたことは謝るが、妹にひどいことをしたことは許せないと言い放った。

父親は激怒していきなり蹴りを放った。
自分の息子にだ。腕折れてるのにね・・

幼い女のコをいじめて挙げ句の果てには下級生に敗北して泣いて帰るとは恥を知れとすごい剣幕。

負けん気の強いボクは相手を睨んではいたが、足はガクガクと震えていたと思う。
敵地に乗り込んだのにガクガク震えているとは情けない仮面ライダーもいたもんだ。

父親は、いい度胸だ、そしていい目だと笑った。
悪ガキが何を言いつけたかは知らないが、たった一人でここまでけじめをつけに来たこの男の言うことが信じられると言った。

この男・・これほどの大物に男として認められたと思うと嬉しかった。

ボクはご馳走になり、妹へのお詫びだとお菓子もいっぱいもらった。

お菓子をいっぱい持って笑顔で帰ったボクに妹は泣いて抱きついた。
○○をいじめるヤツは誰だろうと許さない。○○はボクが守るってちょっとカッコつけたりして。
ガクガク震えてたことは内緒(笑)

その時は気づかなかったが、多分あの父親が家に連絡してくれたのだろう。
アイツの度胸に免じて知らん顔しといてくれとか。
ちょっと帰りが遅くても、お菓子いっぱいあっても母親は何も言わなかった。
びっくりしただろうな、あんな親分からいきなり電話なんてあったら。

それからしばらくしてあの家は会社ごとどこかへ移転した。
組の中で出世してご栄転だったのかな?

いなくなってくれてよかった(笑)
あの父親に気に入られたこともあり、何度か遊びに行くことになったが、緊張はハンパないからね(笑)

○○のことは兄ちゃんが守ってやるの言葉どおり妹のことは可愛がった。
バイト代でおもちゃとか買ってあげたり。

ウチにはビデオもなかったので、就職して給料を稼ぐようになったら、妹にビデオを買ってあげた。
ビデオも安価になっていたので、高校生の時にバイト代で買えたのだが、父親にそんなものは不必要だと言われて諦めたのだ。

家を出て、テレビとビデオを手に入れた時は嬉しかった。働いていても帰ったら見たい番組が見れる。

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