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嫌われ狸の一生

第3章 転落

父親は害虫駆除かなんかの会社で働くようになったと思う。

母親も働きに出たかったと思うが、留守番をすることがただで住まわせてもらう条件だから内職を始めた。

不動産屋に住めなくなれば家賃も払わなければならない。内職は外で働くより収入は少ないが、家賃の支払額と比較しての選択だろう。

妹が赤ちゃんだったこともあるのだろう。

厳しい借金の取り立てにまいってしまった母親は涙ながらに一緒に死のうと心中をもちかけた。
ボクは咄嗟に妹のところに走ってかばうようにしながら 死にたければ自分だけ死ね、ボクと妹はどんな手を使っても生き延びてみせると言った。

この言葉は母親にはショックだったようで、その後二度と死のうとは言わなかった。

ボクは最悪妹と二人で生きていく方法を考えた。
子供二人では食べることもできないから、最悪は盗みでもするか。ボクは少年院に捕まるけど、警察とかも赤ちゃんを見殺しにすることまではしないだろう。保護してくれる施設かなんかに入れてくれるだろう。

なんとも幼稚で短絡的な考えだ。
これが小学2年生のボクが考えた赤ちゃんとボクが生き延びる方法。

母親は心中を思いとどまって泣いていたが、いつまた子供を道連れに死のうとするか分からない。
しばらく死のうとしないのを見届けて安心するまでの間は夜もろくに眠れなかった。

それから一年ぐらいは厳しい借金の取り立てがあったが、その後は取り立てがないわけじゃないけど、そんなに激しくはなくなった。

思うに最初の頃は通常の取引で発生した、相手からすると売掛債権とかもあったのだろう。
こういう債権は取引停止から1年で時効になったりする。だから倒産から1年か・・

残りは出資とか個人的な借入金といったところか。
向こうも取り立てをしないわけではないが、自分が出資していた負い目もあるのでそんなに厳しくはなかったのかも知れない。

すんませんね、ボクは商業高校で勉強したので、こういう経済知識は豊富なんですよ。

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