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嫌われ狸の一生

第4章 不思議な男

父親はいろいろな職業を転々とした。
記憶にあるだけでも、害虫駆除、大手ラーメン店、菓子製造、日清の下請のカップ麺製造会社。

全然職種が違うのに、どれもそこそこのポジションまでいっているからスゴい。
いや、もっとスゴいのは、どれも車を貸してくれたり、会社の製品をもらったりと好待遇だったこと。

なんでもできるんだなぁと関心した。
時々この男ぐらいに能力があればと思ったりもする。

でも、ボクだって高校生の時にいろいろバイトをしたけど、どこも正社員で来てほしいと言われたし、勤務先の会社だって途中まではエリートで、干されたと思っても復活候補に入れてもらったみたいで単身赴任している。そう、単身赴任は断トツで出世する人か復活候補なんだが、復活候補の中ではボクは若いよと自慢にもならないことを一応アピール。

そんなできる男の父親だったが、天狗気質で自分が一番でないと気に入らないところは直らずに、ある程度のポジションになると、それ以上を望んで会社の経営とかにまで口を出して上とぶつかって解雇させられることになる。

いくら小さな会社だって、仕事ができたって社員は社員としてわきまえなければならないのに、そういう堪え性は皆無で、解雇を繰り返しても学習能力もない。

ボクは高校卒業してからヒドイ目にもいっぱい遭ったし、出世も遅れてもずっと今の会社で堪えている。
その点はこの男に勝ったと思っている。

酒癖が悪く、短気なところは全然直らず、しょっちゅう盛大な夫婦喧嘩が続いていた。
借金も返さなければならないのに、給料をもらった日にパチンコで8万円も負けて生活に困ったこともあって、もう呆れた。
この金欠な状況でよくもそんなことができるものだ。

多額な借金を抱えて貧しかったが、そんなに生活苦ではなかったように思う。

ボクも妹も高校までは行かせてもらったしね。
これはスゴいことだし、感謝しているよ。

いくら借金があって月々いくら返済していたのかは知らないが、大したものである。

でも、ボクだって家と車を合わせれば月10万円、ボーナスで10万円の返済をしているが、ちゃんと生活している。

ウチには事業の借金の他は無借金だったし、家賃はただ、不動産屋を追い出されてからも家賃3万円程度のボロ借家だったことを思えば月10万円ぐらいならなんとかなったと推測する。
母親の内職もあったし。

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