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嫌われ狸の一生

第24章 尿管結石

子供が年長さんの年。この年は厄災の年。

夏にボクは病気で初めての入院をする。
冬も近づく頃には幼稚園から呼び出しを受けて子供の発達障害を宣告される。

次の日に大事なプレゼンを控えていたので、大事な書類は家に持ち帰って最終確認を行った。
プレゼンの場所は家から電車で20分ぐらいのところだから直接行くことになっていたのだ。

書類整理が終わって寝ると、突然腰に激痛を感じて起きた。腰といっても力仕事とかして痛くなるのとは違って腰の奥の方だ。

腰を叩いてみても痛いところには全く届かない。

痛みも尋常ではなくて、このまま死ぬのかと思った。死ねるのならまだ楽かも。そう思うほどの激痛だ。

この時はまだ病状は分からなかったので未知の恐ろしいことが起きたと思った。

妻とは家庭内別居だし、起こしたところで助けてなんてくれないし、怒るだけだと思って一人で苦しんだ。

もう、のたうち回って苦しんで一睡もできなかった。

朝になっても激痛は治まらない。

仕事を休んで病院に行きたかったが、大事なプレゼン。書類はボクが持っている。
ボク抜きでやってもらうにしても書類は届けなければ・・・

ボクは朝早く家を出た。
駅まではバスもない。いつもなら歩いて15分のところを30分以上かけて行った。
痛くて歩けない。文字どおり這って行った。

駅の階段も這って登った。階段なんて這っていたらスカートでも覗くのかと駅員とかが来そうなものだが、こういう時は誰も声をかけてくれないものだ。

到着駅から目的地は徒歩20分。いつもなら歩くが、ここはバスがあるのでバスで行くことにした。

バス乗り場まで行くのも至難だ。這いつくばるボクを見かねたのか女子高生が肩を貸してくれてバスまで連れていってくれた。

早く病院に行った方がいいと言ってくれたので、大事な届けものをしたら行くからね、ありがとうと言った。

この女子高生の優しさには涙が出た。
苦しむボクを見ても車で駅まで送るとかこれっぽっちも思わずに、わたしに迷惑をかけるなとか怒っていた家庭内別居人とは大違い。

女子高生の名前と連絡先ぐらい聞いておけばよかった。お礼ぐらいちゃんとしたかったな。

書類を渡して病状を伝えて病院に行くから今日は休ませてくださいと言ったら、車で病院まで送ると言い出した。

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