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嫌われ狸の一生

第24章 尿管結石

大事なプレゼンにこれ以上人が減るわけにいかない。絶対に大丈夫だからバスと電車で行くと言い張ったのだが、無理矢理に車で送ってもらうことにされた。

こういうとこは異常に優しいんだ、ウチの会社は。

この時に車でボクを送ってくれた先輩は何年か後にご本人がガンになり若くして亡くなることになる。人の運命は分からないものだ。

病院に着くとこれまた困ったことになった。
上からも家族が来るまでは一緒にいてあげるように言われたとかで、いくらもう大丈夫だからと言って断っても一緒にいてくれる。

一応妻に電話したが、案の定何やら怒っていて来てくれる気配はない。

こうなれば一か八かの勝負に出た。
仕事のメンバーは妻や子供の顔を知らない。

セフレちゃんはキャバクラ嬢なので日中は暇なはずだ。キャバクラ嬢だからほとんど朝帰りだから眠いところ申し訳ないと言って今の窮状を伝えた。

セフレちゃんは少しも不機嫌になることなく喜んで妻の代役を引き受けてくれた。
すぐにカノジョがやってきた。

子供の幼稚園のこととかあって送ってあげることもできなかったら、とんだご迷惑をおかけすることになってしまいまして申し訳ありませんと本物の妻のような挨拶を丁寧にした。

この対応や挨拶・・ウチの妻には死んでもムリだな。

こんな病状の中書類を届けていただいて、この方(ボクのこと)の責任感と熱意には頭が下がりますとか、無理をさせて申し訳なかったとか、ふだんは言ったこともないような(笑)挨拶をこれまた丁寧にして、偽装妻の登場で安心して先輩は仕事に戻って行った。

後のことは何も心配いらないから治療に専念するようにとこれまた優しいお言葉を・・。

病院は混んでいて待ち時間は長かったがやっと診察室に呼ばれた。これでも死にそうになっているボクを見かねて早くしてくれたらしい。

病状は尿管結石と告げられた。
石といってもバカにしちゃいかん、これはかなり酷い、かなり痛かっただろう、こんな状態でよく出勤なんてと医者は驚いていた。

石を溶かす薬を点滴しておしっこと一緒に出すという治療法が取られたためしばらく入院することになった。

とりあえず痛みを治めるために超強力な麻酔が射たれた。すぐに眠くなるはずだから病室でゆっくり休みなさいと言われた。

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