テキストサイズ

どうか、

第2章 高木の決心

全てが終わったあと、俺は目の前にいる明野_明野桜太郎に声をかけた。




「…桜太郎」




放心したままの彼はぴくりとも動かない。





返事は、なかった。








人間には適応能力が備わっている者と備わっていない者がいる。


親友だったはずの“男”に自分の家で押し倒されてそのまま汚されたとき、その環境に適応できるものは何人いるのか。




はじめは気持ち悪かったしもちろん抵抗も激しくしたものだが、1度達してしまうと流れるように理性が逃げていったのを覚えている。

そして、そんな自分が今は恥ずかしい。




「…なあ」




応答のない桜太郎にもう一度声をかけると、そのままの不気味な無表情で口を開いた。





「…僕は、君が好きなんだ」





まるで学園祭最終日の屋上で憧れの先輩に告白するような、そんな純情な響きのその言葉が妙に気に障って、声こそ荒らげていないがお互いが慎重に言葉を連ねていった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ