
どうか、
第2章 高木の決心
「…俺、嫌だって言ったよな」
「…ごめん」
桜太郎の怯えたようなその声色に、行為中に溢れてとどまることのなかった感情が喉を簡単に通り過ぎていく。
憤怒、悲哀、痛み、屈辱、劣等、負の感情。
「なんでだよ、俺、そんなに悪いことしたのか?嫌われるようなことしたのか?」
震える肩を止めたくて強く拳を握る。悔しさというのか辛さがこみ上げてきて、目を伏せた。
「高木、違うんだ、ただ僕は」
「桜太郎に、あんな…あんな、こと、されるなんて」
思い出すだけで恥の一言だった。愛情という名の性欲を押し付けられ、辱めの限りを尽くされた。
ついさっきまで普通の友達だった桜太郎が今ではまるで、テレビで見るような放火魔や殺人犯のような別次元の他人事のものであるかのように見えるのだ。
