カラダも、ココロも。
第5章 家がないっ!!
【藤井一臣side】
社内を出てから気づく。
そういえばマンションの鍵はどこへやった?
そういえば、狸親父の使用人に連れられた時にキャリーバッグも乗せられたままだ。
ポケットには財布も、悲しいことに着替えも持ち合わせていない。
…どうするってんだ?
とりあえず社長室に戻ることにしよう。
踵を反してそちらに向かった。
―――
社長室はまだ明るかった。
しかし私は入るのをやめ、エレベーターと室内の間…廊下から社長室をみていた。
なぜなら、入る前に甘い嬌声を耳にしたからだ。
「あぁ…んっ……!」
抑えることもなく、荒げる声。
社長用のデスクに馬乗りになった七条秘書は、先ほどまで束ねていた髪を振り乱している。