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Face or Body

第27章 家の灯り

朝が来た。

ヒカルは今日から1週間の休暇である。

機動捜査係の潜入捜査を果たした者には
1週間の休暇が与えられる…。
今日はその初日。
アキラの腕に抱かれて眠った昨夜…

ヒカルは
アキラに身体中をくまなく
舐められた。
まるで他人の匂いが染み込んだ
ヒカルの素肌に
自分の匂いを染み込ますように
長い時間かけて
アキラは舌を這わせた。

その行為は
アキラの無意識な嫉妬だったのか
純粋なヒカルへの愛しさからだったのか
それは
アキラしか分からないことであるが
ヒカルには
たまらなく幸せを実感させられる
愛され方であった…。

ヒカルが目覚めたときには
アキラは川島交番へ
すでに出勤していた。

ヒカルが寝室のある2階から
1階のリビングに降りてきたら
懐かしい匂いがした。

――………懐かしい!!

その匂いは
ヒカルが山口での高校時代まで
ずっと毎朝漂っていた
母のお味噌汁の香りだった…。

――………母さん、ありがと…。

ヒカルは昨夜…
長い間のわだかまりが流れ去った母に

『うわぁ… 懐かしい香りする~』
とキッチンの母美里に
声をかけた。

すると

『おはよう。……でも奥さん失格だよ!!家にいるときは、ヒカちゃんはもう主婦なのよ…。ちゃんとアキラさんには【いってらっしゃい】って言って笑顔で送り出しなさい。』
と美里に注意された。

嬉しかった…

ヒカルは母に注意をされたのは
いつ以来?
薬物に侵された男に
当時大学1年になったばかりの
兄ケンタが殺害されてから
母は口数が少なくなった…

――ケンタ兄ちゃんが亡くなってから、初めてかな…

ヒカルは
兄の死以来
はじめて母が自分を見てくれていることが
本当に嬉しかった。

『ねえ!!母さん!今日はさ、私が横浜を案内してあげる~♪』
ヒカルはそう母を誘った。

すると
『ごめんね~!!ヒカちゃん、私今日帰るのよ山口。』

ヒカルは目が点になった。

すると母の美里は
ヒカルの頭を撫でて
こう優しい瞳で囁いた。

『また来るわよ!!これからは、また来たの~?って、ヒカちゃんが戸惑うくらいね。』

美里はヒカルがまた潜入に入ったときに
アキラの世話をしに来ると
約束した。

『母さん…。今度は横浜見物絶対だからね!!』
ヒカルは美里と
指切りをした。

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