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Face or Body

第27章 家の灯り

『ヒカちゃん。ごめんね… 母さんはお兄ちゃんのことばかり、いつも思い出してて… ヒカちゃん、寂しい思いさせてたね… ごめんね。ヒカ……… … 。』
胸をつまらせて
ヒカルの手をとる美里。

ヒカルは胸が一杯になり

『お母さぁ――――――………ん………』

美里に抱きついて
まるで小さな女の子が
母親に甘えるように
泣きじゃくった…。

長い母娘の間のみぞが
みるみるうちに
埋まっていくさまを

アキラ…
サチ…
サクラコ…
シンタロウ…
タモツたちが暖かい瞳で見つめていた。

そのあとは
ヒカルのお疲れさま会が
リビングで開かれた。

ヒカルは心地よい安らぎにみたされながら
夜が更けていった…。

『ヒカル。よく帰ってきた。それだけで十分だよ。よく港を忘れなかったな。』
アキラは
そっとヒカルに耳打ちした。

『……私は自分が帰る港は何があったって忘れないもん。』
ヒカルは
瞳をウルウル潤ませて
アキラを見つめた…。

お疲れさま会の宴のなか…
アキラとヒカルは
キッチンの片隅で
誰にも気づかれずに
唇を軽く重ねた…。

巻町家の灯は
暖かな明かりを
放っていた…。

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