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Face or Body

第29章 ほの暗く猟奇な世界

『カオル、今日はランチどうする?』
サヤカはカオルに声をかけた。

『あっ…すみません。 …お弁当持ってきちゃってて…』
とカオル

カオルは1人暮らしである。
しかし
母は61歳で健在であるが
若年性のアルツハイマーを患い
現在は施設での生活をしている。

ヒカルは毎週1回
施設に母を訪ねては
手作りのお弁当を母娘で
一緒に食べるのだ…。

すでに症状は進行して
カオルを母親は娘とは認識できておらず
週に1回訪ねてきてくれて
お弁当を一緒に食べてくれる
女の人とし思っていない。

それが寂しいが…
ときにカオルにとれば
母に母としての自覚がないぶん
素のままに
母に悩みなども余計な心配をかけないで
愚痴ることもできた。

――考えようによれば、私の気分転換にもなるし―――
カオルはそう考えるようにしていた。

昨日は
そんな母との時間をすごし
お弁当のおかずが残ったので
弁当にして持ってきたのだ…。

『そっか~ 昨日はお母さんに…?』
と事情を知る
サヤカがカオルに囁いた。
『はい。だからサカヤさん、ごめんね。ヒカルと二人でランチしてきて。』
とカオルは
サヤカとヒカルを見送った。


連続猟奇殺人事件は
手がかりがないまま
捜査が暗礁に乗り上げたままだった――…。

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