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『はい。順調ですね。』
ヒカルの不妊治療を担当している
日下美奈子【ｸｻｶ　ﾐﾅｺ】は
ヒカルにそう診断のあと
笑みをたたえた表情で話しかけた。

ミナコはヒカルと同い年の産婦人科医。

ミナコはカルテを見ながら
ヒカルの診断データをパソコンに
入力した。

――――…………？
ミナコは
カルテに微妙な違和感を一瞬感じた…。

ミナコは几帳面な性格で
数枚におよぶカルテを
彼女なりのルールをつくり重ね合わしている
…。
その重ねかたが
異なっていたのだ。

『あれ？　なんで？』

ミナコは無断で彼女の記録した
カルテを彼女以外の第三者が
閲覧したのかもと感じた。

しかし
個人の医院ではない
ゆまわりレディースクリニックでは
カルテの情報共有は
医師どうしならば可能であったため
そうは気に止めなかった。

そして
目の前のヒカルに
『今週の金曜から土日…月あたりまでが、タイミングです。　いい結果が出ることを祈っています…。　ではこんどの検診は3週間後にしましょう。赤ちゃんがいるかどうかは、その時に大まかに分かりますよ。』
と伝えた。

ヒカルはドキドキしながら
『分かりました。ありがとうございます。』
と答えた。

―――……
この会話が
ミナコとヒカルが交わした
最後の言葉となった。