
泣かぬ鼠が身を焦がす
第8章 網の目にさえ
いや、もともとはそのつもりだったんだけどさ
「嫌か?」
「あ……」
もしかして、あん時のこと気にしてる?
自分からお願いしといて拒んだなんて、悪いことしたよな
「あのさ、あの時のことなら気にしなくていいよ? 俺が悪かったんだし」
「いや、そうじゃない」
杉田さんは俺の顔にかかる前髪を掻き上げてくる
う……!?
顔見られてんの恥ずかしー……
そして
「俺だって男だから、溜まるものは溜まるだろ?」
と、とびきり色っぽい声で囁かれた
わ、わーー!?
なにこれ!!なにこれ!!!!
顔熱い
全身に力入る
どうしちゃったの、俺
「…………わ、かった」
俺が掠れる声で答えると、上機嫌に微笑んだ杉田さんが「なら、早く飯を食べよう」と俺を起こした
離れ際にぽん、と頭に手を置かれて、まだ動悸もおさまっていなかった俺の心臓がさらに早鐘を打つ
う、わ
やばい
全身が鳥肌たってる
期待してんのかな
「ノラ、早く」
「わかってるよ!」
この緊張を悟られたら、なんかダメな気がして
とにかく俺は必死で平常心、と言い聞かせる
「……」
「……」
杉田さん機嫌よさそー
俺みたいになってないのか
