
泣かぬ鼠が身を焦がす
第9章 磯の鮑の
あんたはいつも通り『顔上げろ』って命令口調で言えよ
「なんだよ」
俺が顔あげると、頭を撫でていた手が俺の頬を撫でた
「なんでそんな撫でてくるわけ。うざい」
「ノラはなんか冷たいな」
ふって笑うな
優しい顔すんな
むーーーー
「別に、眠いだけ。つーか杉田さん仕事行かないといけないんじゃないの。そろそろ準備しなよ」
「あぁ。もうこんな時間か。ノラは起きるか?」
腰痛くて動けねーし
「まだもうちょい寝る」
「そうか」
横にあった体温が遠ざかって、ベッドが大きく揺れる
ちょっと寂しい気持ちもするけど
さっきからおさまらない鼓動を少しでもおさめないと
ちょっと落ち着け俺
そう思ってこっそり息を吐くと、離れ際に杉田さんが俺の頭にキスをしてきた
「!!」
そういうことすんな……!!
うーー
けど俺のそんな動揺を杉田さんは全くわかっていない様子で、黙々と1人でシャワーを浴びに行ったり歯磨いたりしている
「朝食は?」
「……」
「もう寝たのか。いってきます」
2度目の寝たふりもきっとバレてるけど
とりあえず知らんぷり
すると、杉田さんは普通に出て行った
