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泣かぬ鼠が身を焦がす

第9章 磯の鮑の


「あーそうそう」
「面白かった?」


俺が「うん」って答えるのとほぼ同時くらいに、茜さんがドラマの見どころを説明しだした

その説明に必要なのかどうかもわからないけど、とりあえず「へー」とか「そうなんだー」とか返事をする


女の人が話を聞かないってのは、茜さんみたいな穏やかそうな人でもそうなんだ


暫くちょっと引き気味に見守っていると、そこそこ満足したらしい茜さんが俺を見た


「それで? そのドラマがどうしたの?」
「あー……あのさ、意地悪してくる嫌な奴にさ、恋……するじゃん?」


うあ、恋って単語がもう恥ずかしいわ


「うんうん。可愛いよね、男役の方」
「え、可愛い? だって意地悪じゃん。すげー性格悪くてムカつくよね」
「まぁ確かに最初はねー」


だよねだよね?


「で、ムカつくって言ってたのが好きってなって、でも相手は意地悪してくるじゃん? どうやって相手にも好きになってもらったの?」


なんか俺
すげーアホみたい……くそぅ


「え、そんなのないよ」
「んぇ? なんで?」
「男の方は会った時から女の人が好きだったんだから、女の人が告白したら即オッケーだよー」


そんなの馬鹿な

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