
泣かぬ鼠が身を焦がす
第10章 3日飼えば恩を忘れず
社長専用らしいエレベーターに乗ってみると、改めて俺がいたこのビルの大きさがわかる
俺がいた部屋、3桁の階だ……!!
どうりで高いわけだわ
チン、と高い音がして、降りてみるとそこは地下1階の駐車場
目の前には黒塗りのベンツ
車には詳しくないけど、杉田さんのことだし多分相当上のグレードのものだろう
でも、その高級車の運転席に人影はない
「あれ? 運転手さんは?」
「呼んでいない。俺が運転するからな」
えっ杉田さんが!?
「運転できるんだ……」
「失礼だな。ほら、乗って」
笑いながら俺の失言に突っ込んだ杉田さんは、助手席のドアを開けて俺を待っている
こういうこと平気でしちゃうんだもんな
ずるいっつの
エスコートされるままシートに座ると、部屋のソファかと思うぐらい身体に吸い付いてきた
「すごい……!!」
「出すぞ」
俺の感動を鼻で馬鹿にした杉田さんはゆっくりと車を出す
「うわぁぁぁあ……久しぶりの外だぁ」
「仮出所の受刑者か」
「久しぶりのシャバだぁ」
くだらない会話を繰り広げる俺を杉田さんが笑ってるけど、俺は決してそっちを見ない
何故って
