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泣かぬ鼠が身を焦がす

第10章 3日飼えば恩を忘れず


そんなの決まってるじゃん

薄く色の入ったサングラスかけてハンドルを握るかっこいい杉田さんを直視できないからだよ!!!!


「あ、ケーキ屋みっけ」
「乗り出すなよ」
「そんなことしないよー」


「そうか」と今日はよく笑う杉田さんを横目でチラッと見ると、その僅かな視線にも気がついたのか杉田さんも俺を見た


「!!……っあ、あれ!見て!テレビでよくやってるやつだ!!」


俺の馬鹿……
誤魔化すの下手すぎ


俺の恋煩いは大分重症らしく、ミラー確認する視線の動きとかレバー操作する手とか全部どきどきしちゃって


今日俺、生きて帰れるかな


とか考えてしまう


「ちなみにさ、今日はどこに向かってるの?」
「とりあえずデートといったら映画だろう」
「映画? へぇ! なんか見たいのあるの?」


映画なんて何年……いや、何十年ぶりだろ
そんな年取ってないけど


「いや、俺じゃなくてノラがな」
「俺?」


そんなこと言ったっけ?


とか考えてたら、信号で止まった直後に俺を見た杉田さんとばっちり目が合ってしまった


やべ


「ノラが前にテレビを見ながら見たいって言ってたやつ」
「う、ぁ……で……でも、あれもう上映期間終わって……る……」

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