
泣かぬ鼠が身を焦がす
第10章 3日飼えば恩を忘れず
俺が変に文句を言ったからか、杉田さんはなにも言わずに少しだけ車のスピードを上げてくれて
そのお陰で映画館には10分とかからずに着いた
中に入ると、平日でもそこそこ大きな映画館だけあって人が結構いる
「混んでるねぇ」
それにしても
もう終わってる映画をどうやってみるんだろ
俺が見たいって言った映画は結構人気だったみたいだし、特別上演とかしてんのかな
そんなことぼんやり考えつつ映画館内を並んで歩いていると、ふと見えたチケット売り場には大量の人が並んでいる
「うわ、めちゃめちゃ並んでる」
待ってる間に映画始まっちゃわない?
すると、杉田さんが俺の背中をポン、と叩いて止まっていた足を進ませる
「ほら、そんなところに止まってないで歩け」
「えっ並ばないの?」
「……」
「わ、何!? そんな目で見なくても……!」
俺を見る杉田さんの視線が怖い
「チケットのことは気にしなくていいから、何か飲み物とか買うぞ」
そう言うと杉田さんは売店に俺を連れて行った
「え、と……ポップコーン食べたい。飲み物は、コーラかなぁ」
「喉渇かないか? それ」
「大丈夫!」
