
泣かぬ鼠が身を焦がす
第10章 3日飼えば恩を忘れず
俺の元気な返事に杉田さんは少し笑って、何故か後ろを向いた
「わっ……!?」
すると、俺が気がつかないうちに後ろに人が立っていた
その人は杉田さんが手で合図をするなり「畏まりました」と言って売店のカウンター内に入っていく
そして杉田さんは
「行くぞ」
と俺を引っ張った
「えっ? えっ? 」
売店にも人並んでるけど、俺たちはまた並ばないの ?
「ねー杉田さん、何もしなくていいの?」
「いいんだよ」
そして、劇場の入り口もチケットを出さずにすんなり入っていく
止められるどころか、店員さんお辞儀してるし
「既に公開終了している映画を見るのも、チケットや売店に並ばないのも、俺にはどうってことないんだよ」
「金…………」
「今まで積むところが無かったからな、こういう時ぐらいな」
おいおい
ソファとかテレビとか
今までも結構金使ってたけど!?
そうは思っても、何となく上機嫌だし
放っておこう
入った劇場には案の定、人は1人もいない
「ほら、早く来い。俺たちしかいないんだから、俺たちが座らないと映画始まらないぞ」
「あ、そうなんだ」
杉田さんが席は自由にしていいって言ったから、俺は真ん中ぐらいの見やすいところを選んだ
