
泣かぬ鼠が身を焦がす
第11章 昔離れたあわせもの
凄まじい肩の痛みに顔を歪めていると
「離せ」
と声がして突然身体を引き寄せられた
引き寄せたのは杉田さんで、俺を庇うように腕の中に入れてくれている
「誰? って……どこかで見た顔だね?」
「俺は知らないな」
ちょっとだけ喧嘩腰な杉田さんを気にも留めないそいつは、ゆっくりとした動きで考えるような動作をした
変わらねぇな、この人も
そして暫くすると、人差し指を上げながら
「あぁ、わかった。 杉田コーポレーション社長の杉田拓真だ」
と答えを出した
「お前は誰だ?」
「酷いなぁ。俺、前にあんたと会ったことあるよ?」
「なんだと?」
そして、不気味な笑みを絶やさずにそいつは名乗った
「俺は、藤本幹也」
「藤本……って」
杉田さんの何か思い当たるものがあるような言い方に、藤本は笑みを深めた
「そう。藤本泰造の孫」
藤本泰造ってのは、政党の党首も任されるほど力も権力もある国会議員
国民の代弁者と言われるほど多くの国民から支持を受けてる
「それ、俺のなんだよね。返してくれる?」
「もうお前のものじゃないだろう。手放したんじゃないのか?」
