
泣かぬ鼠が身を焦がす
第1章 濡れ鼠
…………ん……
眩しい
ここ、どこだ?
薄っすら目を開いて目線を動かしてみれば、やけに近くにあった天井らしきそれが天蓋付きのベッドだったことに気がつく
ふわふわした素材のベッドや天蓋に、真っ白なシーツ
俺はその上に横たわっていた
なんで俺なんかがこんな綺麗なところに寝てんだろ
身体、動かない
気を失う前って確か.……
あ……そっか……死んだのか、俺
まじかよ
ここ天国?
地獄じゃないの、俺が行くところは
すげー綺麗なところ
微かに動かすことが出来るようになった首で近くを見渡してみる
いくら見ても、俺には似つかわしくない場所だな
暫くそのままぼんやりと部屋を眺めていると、ドアの開く音が聞こえてきた
「!」
「目が覚めましたか」
入ってきたのは知らない男の人で、サラサラの髪を今風に流してスーツをびしっと着こなしてる
無表情なその顔はびっくりするほどイケメンだけど、眼鏡のせいかなんか冷たい印象を受けてしまう
「……ぅ……」
ここはどこ
あなたは誰
って声を出そうと思ったけど、なんでか声は出なくて
唸ったみたいになってしまった
「あぁ、無理に声を出そうとしなくて大丈夫ですよ。酷い風邪を引いているそうなので、喉もやられてしまったみたいです」
