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泣かぬ鼠が身を焦がす

第13章 正直の心より


こんなところ一刻も早く出て行ってしまいたい


それを伝えるために何度か頷くと、杉田さんは震える俺をシーツに包むとなんとか抱えて部屋から連れ出してくれた


そこからはあんまり覚えてない

車に乗せられて、気がついたら会社で
次の瞬間にはもう部屋のベッドにいた


寝かされたすぐ横に座る杉田さんは、さっきからずっと俺の名前を呼びながら頭を撫でてくれて

「水はいるか?」とか「寒くないか?」とか声をかけ続けてくれてる


杉田さんの手、安心する
撫で方も優しくて好き


長い時間をかけて少しずつ震えは治まって行ったけど、治まった頃には俺は冷や汗でびちょびちょだった


「落ち着いたか?」
「……ん……もう大丈夫。……ぁ、」
「なら、シャワーでも浴びてこい」


ごめん、て言う前に遮られてしまった

でも杉田さんに怒ってる様子はないから、何も言わずに小さく頷く


「俺はその間に何か飯でも用意しておく。何か食えそうなものはあるか?」
「もう全然大丈夫だから、何でも食べれる」
「そうか」


ふ、と笑う笑顔が優しくて胸が痺れた

シャワー室に向かいながら部屋の出口に向かう杉田さんの背中をチラチラ見る

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