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泣かぬ鼠が身を焦がす

第14章 鼠の志奪うべからず

杉田目線


純が、社長室の隣の部屋から移動したいと言い出した

ちゃんとした家に住みたい、なんて希望は人間なら誰だってあるだろう

もしかしたら部屋から全く出さない生活で、心的ストレスを感じさせてしまっていたのかもしれない


「はぁ……」


俺は移動中の車の中で書類の確認をしながらため息をついた


離してやれない、よな……


確かにあそこじゃプライバシーも何もない

俺や秘書たちが常に出入りする社長室が隣じゃ休まるものも休まらないのかもしれない

だが

1人暮らしなんて、許せるはずもない


俺の稼ぎなら純をセキュリティの良いマンションに入れてやって、家政婦をつけることも可能

しかし仕事を終えた俺の癒しがなくなってしまうのは惜しいどころの話ではない

それに、ここからどんなに近くのマンションに部屋を取っても車で数分はかかる


くそ


俺から離れたいのか、なんて聞けもしない疑問が頭に過ぎった

随分自分の家にも帰れてないほど忙しいのに、純を遠ざけるなんて自殺行為じゃないか


しかし思い出されるのは昨日の純の顔

まさか拒絶されるなんて、と言わんばかりにショックを受けていた

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