
泣かぬ鼠が身を焦がす
第14章 鼠の志奪うべからず
誤魔化せただろうか
静は過去純に好意を寄せていたことがあったこともあって、何となく警戒してしまう
だから、易々と相談も出来ない
どうしたものか
またため息をつきそうになって、下手に心配をかけてはいけないと飲み込む
しかし頭から払拭することは出来ず、その後の仕事中もずっと気になってしまった
夜になり
「それでは本日はこれで失礼致します」
と静が出て行くと、沈黙した部屋に1人取り残される
部屋の扉を見た
純はいつも物音を立てることはないのだが、今日に限っては腹を立てているのではないかと勘ぐってしまう
どうしたものか
ちゃんと話し合うべきなのはわかっている
けれど
「……」
いや、うじうじしていても仕方ない
部屋に行こう
俺は椅子から立ち上がり、食事を持って純の待つ部屋の扉を開いた
「……」
普段なら何かしら声をかけるのだが今日は静かに部屋に入る
純は……
どこだ?
机の上に食事を置き、視線を巡らせる
あぁ、ソファか
背凭れで死角になっていて見えなかったソファに近づくと、純が小さくなって眠っていた
こんなに小さく丸まらなくてもいいだろう
