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泣かぬ鼠が身を焦がす

第14章 鼠の志奪うべからず


とは思ったが、こうして寝るのは昔あったことが原因なのか、なんてことを考えると胸が痛んだ


起こすべきか


近づいて頬を撫でると、純が身動ぎする


「……ん、ぁ……」
「純?」


夢を見ているのか目蓋が痙攣して、俺の手を掴んで頬ずりしてきた


可愛いな


そして頬を指先で擽ると


「!」


純の頬から涙が溢れて、流れた


また悪い夢でも見ているのか?
最近はないと思っていたんだが

起こさないと


「おーーー」


『おい、純起きろ』と声をかけようとしたその時、続いて純の口から漏れた寝言に息を飲んだ


「たくま、さん……ごめ、な、さ……」


純が見ていた夢は、どうやら俺の夢だったようだ

寝言で俺に謝る純の姿に痛いほど胸が締め付けられる


あれだけ傷ついた純を、俺は今更に傷つけているのか

なんて馬鹿なんだろう


俺は寝ている純の脇に手を入れて持ち上げると、自分の膝の上に置いた

その衝撃で目が覚めたらしく純が顔を顰める


「……ぅ、ん……え、何……」


そして早くも状況を察したらしく慌て出す


「なに……拓真さん……いつの間に、え……っ」
「純、おはよう」

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