
泣かぬ鼠が身を焦がす
第15章 鼠の志
次の日、本当に休みを取ってくれた拓真さんと一緒に俺は久しぶりの外に出た
エレベーターで地上まで下りるといつもの通り車が寄せられる
運転手さんが降りて拓真さんが乗り込み、助手席には俺が乗った
「どのくらい?」
「20分ぐらいだな。以前出かけた際もそうやって時間を確認してきたな?」
「だって早く見たいじゃん」
「そうか」
拓真さんがゆっくりと車を発進させると、運転手さんがお辞儀したのが見えた
それから何気ない会話をしながら車を走らせて十数分
拓真さんが1棟のマンションを「あれだ」と指差した
「デカい……」
「昨日言っておいただろう」
「それでも想像以上にデカい」
小高い丘にあるいかにも高級マンションって感じの建物は、太陽の光を受けて輝いて見える
あんなに良さげなところならさぞ景色もよかろう
なんて変なことを考えているうちに、車はすぐに建物の下に到着した
「着いたぞ」
「うん」
駐車場に車を停めて、歩いてエントランスに入る
ホテルのロビーかよ……
つーかマンションのエントランスにあるソファってなんのためにあるわけ?
人もいねーしさぁ……
もったいない
欲しい
