
泣かぬ鼠が身を焦がす
第16章 馬に蹴られる
会社に帰ると玄関には伊藤さんがいた
「おかえりなさいませ」
「あぁ」
「ただいまー」
休みとは言ってたけど急だったからやっばりチェックしなきゃいけないことがあったみたいで、エレベーターの中で俺にはわからない話をしてた
社長室に入ると、拓真さんに「先に行ってろ。すぐ行く」と言われて俺は1人部屋に入る
「ふへぇ」
そしてソファにダイブして転がった
久しぶりの外出疲れたー
でも、楽しかったー
うだうだしていると、扉が開く
入ってきたのは茜さんだった
「おかえりノラ〜」
「ただいま茜さん」
「楽しかった?」
茜さんの手にはお盆があるから、晩御飯を持ってきてくれたらしい
「楽しかったよ! てかさ、ここの家具って茜さんチョイスだったんだね」
「あれ、言わなかったっけ? そうそう。ベッド可愛いでしょ〜」
「うん……女の子らしいよね」
ちょっと答えにくい質問を無難に乗り越えて、テーブルの方に歩く
「美味しそ」
「やったぁ。残さず食べてね」
「俺残した事ないじゃん」
「確かにそうだ」って笑う茜さんは、チラッと俺を見た
「なに?」
俺の質問に茜さんは目線をちょっと落として話しにくそうにする
