
泣かぬ鼠が身を焦がす
第16章 馬に蹴られる
珍しいな
こんなに言いにくそうにしてるの
「本当に、何?」
「……あのさ、社長の家……どうだった?」
どうだった?
すごいぼんやりした質問だな
「おもしろかった、よ」
「社長って、どんな家具とか置いてるのかなぁ?」
「家具? えっと……」
俺は拓真さんの家にあった家具をざっくり説明してあげる
茜さんはそれをやけに真面目に聞いてた
「なんかあるの?」
その目の光には流石に何かあるだろうと思って聞いたんだけど、その質問に茜さんは顔を赤くした
え、なんだよ
「もうすぐ社長の誕生日だから、プレゼントを選ぶ参考にしようと思って……会社にあるものは全部秘書室の誰かが選んだものだから……」
え!?
誕生日!?
と思うのと同時に
つかその反応って
まさか
「茜さんて拓真さんのこと好きなの?」
「!!」
俺の言葉に茜さんの顔がさらに赤くなる
え、うわ
まじか
「あの、違っ……え、と……」
「……」
「…………うん…………身分違いだって、わかってる……けど…………」
本当に、好き
なんだ
俺が呆然としてしまって何も言えないでいると、茜さんは
「プレゼントあげるくらい、いいと思って……っ、あー私用事あるんだった! また明日ね、ノラ!」
