
泣かぬ鼠が身を焦がす
第16章 馬に蹴られる
内心ホッと息を吐きながら、俺が拓真さんの身体に回していた腕を外される
バレてたら、声かけてくるよな……
ってことは普段からこうだった?
まじかよ
恥ずかし
俺変な顔してないよな……?
一瞬茜さんとのことを忘れてしまう程衝撃的な出来事に、俺は普段起きる時間まで早まった鼓動を抑えるのに集中した
今日は朝はゆっくりしていられるらしい拓真さんは、寝たフリを止めた俺と一緒に朝食を食べる
「顔色が悪い気がするが、体調が悪いか?」
「へ? あ、いや……別に? 悪くないけど」
「そうか。少しでも何かあるならちゃんと言えよ。体調を崩してから気付くんじゃ遅いからな」
「うん」
寝不足です
でも、言えないから
明日には治せるよきっと
そんなことより、と俺は一晩茜さんとのことを考えて得た結論を拓真さんに提案してみた
「ねぇ拓真さん」
「なんだ?」
「俺さ、今日ヒトミさんのところ行ってきちゃだめかな?」
「今日は忙しくて一緒に行けないが……」
「俺1人で行きたいんだよ」
「1人で」って言葉に、拓真さんが顔を顰める
心配してんのか
何か疑ってんのか
疑ってるわけないけど、少し不安になった
