
泣かぬ鼠が身を焦がす
第16章 馬に蹴られる
「……運転手は付けるぞ」
「? うん。ありがと」
「ならいい。気をつけてな」
え、なに?
何の心配してたわけ?
拓真さんは運転手をつけられれば満足らしく、普通に食事を再開した
「何時ぐらいに準備出来そうだ?」
「え? えー……と、10時とか?」
「わかった。その時間に下に車つけさせる」
「うん」
結局その後は特にその事に触れずにいつも通りの会話をして、食事を終えた
朝食の後すぐに準備を始めて、俺が言った時間にはちゃんと準備を終えた
部屋を出ると拓真さんがまだ社長室にいて、また「気をつけて行ってこいよ」と言ってくる
「うん。行ってきます」
「あぁ、ちょっと待て」
「何?」
「社員用の携帯を1台貸してやるから、用事が終わったら運転手に連絡しろ」
部屋を出ようとすると拓真さんに呼び止められて、差し出されたのは最新式のスマートフォン
社員用ってなんだ
こんないいの配給してるの?
さっすが
今日送迎してもらう運転手さんの名前を教えてもらって、俺はそれをポケットにしまう
「んじゃ、本当に行ってきまーす」
「あぁ」
静さんに下まで送ってもらって、そこから車に乗って指定した場所まで送ってもらった
