
泣かぬ鼠が身を焦がす
第16章 馬に蹴られる
俺が小さく溜息を吐くと、ヒトミさんが仕方ないという風に息を吐いた
「純、拓真さんの誕生日は?」
「え、と……来週……」
「ここには何度か来れる?」
「多分……? 今日も別に嫌な顔されなかったし……」
いくつかの質問に俺が答えると、ヒトミさんはおもむろに立ち上がって机の上を漁る
なに?
そして1冊の雑誌を持ってくるとそれを机の上に広げた
「ならアンタ、ここでバイトしてこれ作んなさい」
「なに、これ……」
「ドライフラワーキャンドルって言うの。難しくもないし、そんなに材料費もかからない」
開かれたページに載っていたのは、色とりどりの花がキャンドルに埋め込まれた見た目にも綺麗な蝋燭
でも、バイトって
「そんな夜遅くまでいられないよ」
「日中店の掃除やら準備してくれればいいわよ」
「……」
「材料は取り寄せといてあげる。作り方は、店のお客さんに詳しい人がいるから聞いといてあげるわ」
ヒトミさんは俺の方を見て微笑んだ
「その代わり、埃1つ残さず完璧に綺麗に仕事しなさいよ」
「!」
うわ、なんか
涙出そう
「やる!!! 俺、ここで仕事する!!!」
