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泣かぬ鼠が身を焦がす

第18章 遠くなれば薄くなる?


それがいちいち拓真さんなんじゃないかって期待しては期待が外れての繰り返しで、精神的にも疲労が溜まった


寝てないし
何も食べてないし


それでも何もする気にはなれず、ずっと扉の向こうから聞こえる音に耳を澄ます

そして何度目かの社長室を人が歩く音の後、ついに部屋の扉が開かれた

ノックなしで入ってきたその人は当然拓真さん


「おかえっ…………り…………」
「あぁ」


昨日は何もなかったかのような表情の拓真さん
その手には、たくさんの袋や花がある

全身に鳥肌がたった


あ、うわ
やばい……泣きそう

つか、吐きそう


「なんだ? 晩飯を食べてないのか」
「うん……拓真さん、帰ってきたら一緒に食べようと……思って、て……」
「そうか。でも、食事を無駄にしたりするな。自分で判断して食え。それぐらい出来るだろう」
「…………ごめん……」


いつもなら、もっと反抗できただろうし
もっと嫌味言えたと思う

でも、今は無理

息してるだけで精一杯
変なことしたら泣きそう


仕事でどこかに泊まって
帰りが朝になったらここまで来る間に色んな人にプレゼントを渡された?

本当にそう?


拓真さんを疑ってる自分も、疲れてるに決まってるのにいつも通りに話せない自分も嫌いで仕方ない

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