
泣かぬ鼠が身を焦がす
第18章 遠くなれば薄くなる?
「そうか。場所が変わったら報告してくれ」
「かしこまりました」
仕事も忙しくなり俺も同行するとは言えず、やきもきする日が続いた
ヒトミさんの店に通い始めて1週間も近くなった頃
「今日もヒトミさんのところに行くのか?」
とたずねてみた
「あ、うん……だめ?」
不審な態度
何かやましい事があるんじゃないのか
眉を顰めた俺に、純は少し焦っているように見える
「そんなに毎日、何をすることがあるんだ?」
「別に…………普通に、喋ってるだけ……」
オドオドした態度のまま言い訳めいた事を言われ
「話しているだけで朝から暗くなるまで毎日か? 随分だな」
つい心にもないことを言ってしまった
本当は、純が隠し事をしているんじゃないかって心配している
何も話してくれなくて不安だ
と思っていたのに
頭に血が上ると、俺でもこんな失言をするのか
「……っ!」
明らかに怒った様子の純
「いいじゃん別に。俺の勝手でしょ」
そう言われれば何も返すことが出来なくて
無駄なプライドが邪魔をして謝ることも出来ず
「……」
俺はそのまま黙って準備をして出社した
