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泣かぬ鼠が身を焦がす

第18章 遠くなれば薄くなる?

拓真目線


朝起きたら、純の顔色が妙に悪いと感じたある日


「俺さ、今日ヒトミさんのところ行ってきちゃだめかな?」


と突然言い出した純に、俺は素直になぜ、と思った

俺はついていけないぞ、と言ってみたが純は引き下がらず、むしろ1人で行きたいと言う


何か隠さなければいけないものがあるのか


と勘ぐってしまうのは、自然なことだろう


「……運転手は付けるぞ」


俺のささやかな反抗にも純は何食わぬ顔で礼まで言ってきた


まぁ気にしていても仕方ないか
何かあったら言うだろう

それに、前回訪問した時には邪魔が入ってゆっくり話せなかったのかもしれない


硬い信頼関係に結ばれているようなヒトミさんに嫉妬心を抱かなくもないが、会いたいと言うのを止める権利はない

俺はスマートフォンを渡して、運転手を付け外出を許可した


その日純は陽が落ちるまで帰ってこず、おまけにそれから数日間毎日のようにヒトミさんのところに通った


「ノラ様ですか? お送りする場所もお迎えに上がる場所も毎回同じでーー」


運転手に行き場所を聞いてみたが、車を乗り降りする場所は毎回ヒトミさんの店の付近だと言われる

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