
泣かぬ鼠が身を焦がす
第18章 遠くなれば薄くなる?
あれは…………金、だよな……?
もしかして純は、俺に隠して外でウリをしてたのか?
頭からさっきの光景が離れない
そういえば男は荷物を持っていたな
あれは、純への貢ぎ物ということか?
嫌な方にばかり考えが向く
もしかしたら俺の知らない知り合いだったかもしれない
でも、封筒を渡すようなことってなんだ
手紙?
いや手紙用のものにしてはやけに縦に長かった
企業からのものならまだしも、個人からの手紙であんな封筒は使わないだろう
もしかしたらそういう手紙もあるのかもしれない
が、どうしても俺の考えは最悪の場合を想定してしまう
「社長、着きました」
いつの間にか長い間考え込んでいたらしい俺は運転手が扉を開け、静に声をかけられてから正気に戻された
「社長?」
「あぁ、今行く」
「先ほどより顔色が良くないように見えますが……」
いつもなら有り難い有能な秘書の心配にも、今の俺には感謝する心の余裕すらない
「……」
俺は黙って車を降り、仕事に向かった
仕事を終え社に戻ると、純が戻ってきていた
「帰ってたのか」
「うん。ただいま」
俺の言葉に返事をする姿は特に隠し事をしているようには見えない
