
泣かぬ鼠が身を焦がす
第18章 遠くなれば薄くなる?
普段洋服を入れている引き出しに手を掛けている純に「これから風呂か?」と聞くと
「え……」
少し驚いたような反応の後に
「うん、入る」
と返事が返ってきた
「そうか」
「……」
「? なんだ?」
俺の顔をじっと見てきた純に何か用かと尋ねる
「なんでもない」
なんでもない、のか
本当に
俺に何か言うことがあるんじゃないのか
そうは思ったが追求はせず、その代わりに脱衣所に向かう純の背中に声をかけた
「純」
「なに?」
「今日の晩飯は1人で食べてくれ。俺は出掛ける」
少しだけ、隠し事をしている純への意地悪
のつもりだった
普段一緒に飯を食べているし、多少は惜しんでくれるかと期待した
が、俺の期待はあえなく散って
「そう。わかった」
とあっさり返されてしまった
俺がいなくても寂しくない、のか?
純がそこまで素直に言ってくれるなんて思ってもないが、多少は態度に出してくれるかと
「……」
「? なに?」
「いや、行ってくる」
今度は俺が純をじっと見てしまっていて、俺も純と同じようになんでもないという意味の言葉を発し部屋を出た
