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泣かぬ鼠が身を焦がす

第18章 遠くなれば薄くなる?


一刻も早く純を探さなければ

何処か遠くへ行ってしまってからじゃ
他の誰かのものになってしまってからじゃ遅い

俺だけのものなんだ


探して、見つけ出して
面と向かってちゃんと謝りたい


何もわかっていなくてごめん
八つ当たりしてごめん

誕生日祝い、嬉しかった


礼の言葉も言えないなんてあんまりだろう


そして、許してもらえるなら
また俺の腕の中に閉じ込めてしまいたい

もうずっと、俺の側を離れることが出来ないように
2度とこんなすれ違いが起きることのないように


俺は目に僅かに滲んでいた涙を拭いて立ち上がった

そしてすぐに部屋を飛び出す


「社長? どうかされましたか。先ほどノラ様がお急ぎの様子で出て行かれて……」
「悪い、静。今日の予定は全て後に伸ばしてくれ」


恐らく普通なら出来ない相談だろう

だが静は純と俺の様子に何かを察したらしく


「畏まりました」


と頷いてくれた

本当ならここで静に純を探すのも手伝ってもらったほうが効率的なのはわかる

が、俺が自分の手で探し出さないといけない気がして

そうしないと、純の心がちゃんと俺の手に戻って来ないような気がして


「少し出てくる」


俺は1人で会社を後にした

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