
泣かぬ鼠が身を焦がす
第3章 枕
思ってもない文句をつけると、「そうか」と杉田さんは少し指を立てるようにして洗ってくれる
何このひと
変なの
「濡れると髪長いな」
黙って洗われていると、後ろから声をかけられた
「濡れる前も長いとは思ってたけど」
「あーまぁ、くせっ毛だから濡れるとその分伸びるしね」
1度も染めたことのない真っ黒な髪が目を開ければ嫌でも目に入る
伸びっぱなしで、濡らすと普通に肩につく
ちょっと伸ばしすぎかなぁ
「前髪も長いし、顔にかかって鬱陶しいだろう」
「んー別に?慣れてるし」
ないと落ち着かない
「そうか。……流すぞ」
「あい」
目を閉じると、頭からお湯をかけられる
自分でわしゃわしゃ髪を掻き混ぜて泡を流した
「ほら、身体は自分で洗え」
言われなくても自分で洗うって言ったし!
でも久しぶりのお風呂、気持ちいい
やっぱあんまり汚れてんのは気持ち悪いんだよなぁ
さっきまで汗でベタベタしてたし
汗は、夢のせいだと思うけどね
「洗い終わったか?」
「ん」
「浸かってろ」
なんでこの人は毎度毎度命令口調なの
「はいはい。うわ、熱い……」
「肩まで浸かれよ」
ほらまた
