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泣かぬ鼠が身を焦がす

第3章 枕


俺がうんうん唸りながら浸かっていると、頭と身体をざっと洗った杉田さんが湯船に入ってくる


じゃあ俺は上がろうかな


と腰を浮かせると俺の身体に腕が伸びてきて、杉田さんの脚の間に座らされた


「わっ、なに?」
「まだ。もう少し浸かってろ」
「えぇ?もー熱い」
「……」


シカトかよ


「……」
「……」


なんで捕まえておいて何にも喋んないの
俺が気遣うんだけど


続く沈黙に耐えきれなくて、とにかく話題を探す


「ねー、抱き枕は?」
「さっきも言っただろう」


俺ってやつ?
ふざけてんの

可愛いやつって言ったじゃん
それに


「毎日使うものなのに、杉田さん毎日いないじゃん」


湯船の中の自分の手を眺めながらそう言うと、後ろからぱしゃん、と水の跳ねる音が聞こえた


髪搔きあげたのか
仕草ひとつひとつがなんか色っぽくてむかつく


「そんなに寂しいなら、いてやるけど」
「杉田さんがいなくて寂しいんじゃなくて、抱き枕がないと嫌なの」
「その2つに違いがあるのか?」
「あるでしょ。馬鹿なの?」


会話するのも疲れるタイプだな、この人


「……」


そんでまた黙るし
……馬鹿とか言ったの悪かったかな

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