
泣かぬ鼠が身を焦がす
第19章 七転び八起き
手の中でキャンドルをくるくる弄んで眺める拓真さんに、俺も吊られて嬉しくなる
暫くそうやって見てた拓真さんが、突然鼻を鳴らした
「?」
「どうしたの?」
「これ、何か香りが付けてあるのか?」
おぉ、すごい
当たり
まぁわかんなかったら付けた意味ないんだけどさ
「うん、そう」
俺はアロマを選んだ時の記憶を蘇らせる
商品説明のところにストレス解消って書いであったから
拓真さん毎日仕事して大変そうだし
すると、拓真さんはキャンドルの香りを嗅いで
「イランイランか? 俺のイメージってこんな甘い?」
と呟いた
ふ、と笑う拓真さんにきゅんとしつつ「アロマはあってるけど、違うよ」と否定する
つか、名前わかるんだ
すげー
アロマにも知識あるってこと?
「拓真さんのイメージで選んだわけじゃいけど、拓真さんにって選んだやつ」
「ふぅん?」
そう言いながら拓真さんはもう1度キャンドルの香りを嗅いだ
そして俺に向き直る
「よし、風呂入ろう」
「えっ今から?」
「そう。お前だってあんなところで横になってたし、過呼吸になった時に汗かいてたろ。俺も汗かいてるし丁度いい」
