
泣かぬ鼠が身を焦がす
第20章 魚心あれば
俺の言葉に、耳元から離れた拓真さんが「それはそうだろう」と言う
「普通のアロマを売ってる店が媚薬なんて売るわけないだろうが。そういう店ならまだしも」
「そういう店って……拓真さん行ったことあるの?」
「一般論だ」
不満そうに呟く拓真さんを今度は俺が笑った
拓真さんもエロい気分になったのかな
俺は……どうだろ
アロマのせいかと聞かれると微妙?
どっちかって言うと拓真さんのせいな気がする
「そろそろ上がるか?」
「うん」
考え事をしていた俺に確認を取った拓真さんはそう言うと、俺の身体の向きを変えて脇と膝の裏に手を滑り込ませてきた
「暴れるなよ」
「えっ……なに、わぁ!?」
そしてそのまま所謂お姫様抱っこをされ、浴槽を出る
「歩けるよ! 今度こそマジで歩けるから!!」
「だめだ」
「なんで!?」
「……」
「シカトかよ!」
俺の言葉を華麗にシカトした拓真さんは俺を抱きかかえたまんま浴室も出て、脱衣所へ
そこで俺を下ろしてくれたんだけど、すぐにバスタオルを頭からかけられて乱暴に拭かれた
「な、なに……っ」
なんでそんな急いでんの
俺の身体を拭き終わると、自分の身体もがしがしと吹き始める拓真さん
