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泣かぬ鼠が身を焦がす

第25章 合縁奇縁


その他にもいくつかあった条件は、当然だと言われれば当然な俺の人としての権利を保障するもの


でも
だからって

それじゃ


俺は結局、1人に戻っちゃうじゃん



「……」


黙り込んで何も言えなくなった俺に、一瞬だけ拓真さんの視線が移った


何を、考えてるんだろう


拓真さんの気持ちを読み取りたくて視線を合わせようと見たけど、拓真さんはもうこっちを見てくれない


どうして

拓真さん……!!!


思い通りにならない状況にやきもきしていると、紙を読み終わった母さんが顔を上げる


「……わかりました。この条件を飲めば、私に純を引き取らせてくれるんですね」
「えぇ」


嫌だ

嫌だ

嫌だ

拓真さん!!!!!


せめて拓真さんとゆっくり話す時間を

そう思ったんだけど


「純、荷物を纏めてこい」


と拓真さんが俺の方を少しも見ないで言うから
俺はもうすっかり意気消沈して


「…………はい」


何も考えずに立ち上がって部屋に向かった


クローゼットに隠れていた時と同じように自分の荷物を纏める

せっかく纏めた荷物を元の場所に戻したばっかりだったのにまた同じことするのか、という無力感に駆られながら俺はただただ手を動かした

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