
泣かぬ鼠が身を焦がす
第26章 嘘八百
俺がその態度の変わり様を確かめるために母さんに視線を移すと、それに気がついたらしい母さんが俺を睨みつけた
「何よ?」
「……やっぱりな」
「何が?」
母さんは俺のことになどまるで興味がないようにカバンから携帯電話を取り出して操作し始める
「あんたのその八方美人なところ、変わってねぇな」
「ふふっ、今更何言ってるのよ」
人と喋ってる気がしない
こいつはきっと、人間じゃない何かだと思う
だって俺にはまるで理解できない生き物なんだから
「ずっとこうして生きてきたんだから、今になって変わったりするわけないでしょう? 馬鹿ね」
「…………」
いや、本当は似てたのかも
拓真さんと出会う前
ウリで生きてたあの頃の俺は
「何よ? じろじろ見ないでくれる?」
「あんた、まだあの人と夫婦の関係なんだ。とっくに別れたのかと思ってた」
俺の言葉を母さんは鼻で笑った
「あの時は確かに驚いたけど、良い脅しのネタが見つかったわ。お金も何もかも自由だもの」
「……」
そういうことかよ
俺は視線を前に戻して溜息を吐いた
母さんはやっぱり変わってない
あの頃のまま
何も変わってない
